神奈川県手話言語条例(Vol.487)
2015/01/09 ブログ by 安川有里
1/9、県庁で「議員と県幹部との賀詞交換会」が行われました。
今年も恒例の、知事と議長を囲んで女性議員の記念撮影!この、笑顔!皆さん元気いっぱい!今年もしっかり活動していこうと誓いました!
それでは、神奈川県手話言語条例について、ご報告!!
12/25、県議会定例会の最終日に「神奈川県手話言語条例」が議員提案され全会一致で可決しました。これは、県民の声から生まれた条例です。
ろう者は、障害が外見では分かりません。例えば、緊急事態の時、放送されている事すらわからず不安になるのに、周りの方にはその不安が理解出来ないなど、皆さん日常生活に不便さを感じていらっしゃいます。そんな時、ろう者以外の人が手話を使って、今の状況を説明出来れば、不安を払拭する事が出来ます。
手話の歴史を振り返ってみましょう。1760年、フランス・パリに最初の聾唖教育施設が創設され手話教育が始まりました。日本は、欧米に比べ歴史は浅く本格的な手話の成立は1878年です。「京都訓聾唖院」院長の古河太四郎が手話を用いた教育に熱心に取り組みました。その後、世界的に手話より口の動きから相手の言葉を読み取る「口話法」が中心になっていきます。
日本では1933年以降、2011年まで、手話は法律上は言語として認められていませんでした。多くのろう学校では、「口話法」が主流となっていました。口話法は習得が難しいといわれ、これまで多くのろう者は、先輩等の手話を見て憶えていたといわれています。そこで、手話言語法という、手話を言語として認める法律を制定しようという動きがでてきました。
わが国でも、1993年には文部省がろう教育での手話の活用を認め、2011年には障害者基本法の改正により、「言語(手話を含む。)」と規定することとなり、わが国でも手話の法的認知が行われました。また、平成26年には障害者の権利に関する条約に批准しました。(国連障害者権利条約には、手話が言語であると明記されています)
最近、横須賀市では、ほとんどの式典やイベントの時に手話通訳が入ります。
障害者基本法の改正等により、手話の法的認知が行われたとはいえ、わが国ではまだろう者、手話に対する理解が十分とは言えません。手話を理解する人が少なく、ろう者が情報を入手したり、聞こえる人と意思疎通を図ることが困難であることは、ろう者が日常生活、社会生活を送る上での苦労や偏見の原因になっています。
県議会での「手話言語条例」可決に話を戻します。(この条例採択は県としては全国で2番目になります。)
条例制定のきっかけとなった陳情には5万4千筆を超える署名が添えられていました。本会議当日もたくさんの傍聴がありました。「当事者の皆さんの運動がもたらし、議会を動かした」その変化を実感しました。
障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、「手話」は言語として明確に位置けられています。条例においても「手話は、手や指、体の動きなどを用いる独自の語彙及び文法体系を有し、ろう者とろう者以外の者が、互いの人権を尊重して意思疎通を行うために必要な言語である。」と謳っています。
条文には、県の責務、市町村との連携および協力、県民・事業者の役割等が規定されています。それぞれが取り組むべき課題、方向性についての考え方や具体的取組みをより明確にし、施策を総合的・計画的に推進して行く上で、「手話推進計画」(第8条)は非常に重要だと思います。
その計画について、昨年「手話言語条例」を全国に先んじて制定した鳥取県では、条例に基づき当事者団体の方々も委員として参加した協議会を設置し、その意見を聴きながら計画の策定にむけて、現在議論が進められています。神奈川県においても、手話推進計画の策定等にあたっては、当事者の意見を反映できるような方策を検討する必要があると考えます。
この条例は、自民・公明・県政の3会派から提案があり、私たちも勉強会や当事者の方との意見交換会に参加した上で、本会議で質疑応答が行われました。
私の所属する会派(維新の党)からは計画策定の時期について、若林県議からは、当事者の意見を聞いて計画を策定すべきとの質問を行いました。
提案者のしきだ県議からは、「県民の皆様の声に対し、謙虚に『心の耳』を澄ませ、県民の思いに寄り添い、一人ひとりの人格と個性が尊重される社会の実現に向けて、真摯に取り組みを進めていくことが求められていると考える」「障害者権利条約に関する運動展開に際し、各国の多くの障害者が使っていた言葉、“Nothing About Us Without Us”すなわち、『私たちのことを、私たち抜きに決めないで』という言葉にあるように、当事者参加の観点は、極めて重要であり、幅広い県民のご意見が計画に反映される仕組みを構築したい」との答弁がありました。
この条例制定は共生社会への第一歩です。手話独自の「語彙と文法体系」を理解深め、広く普及していくためにも、手話推進計画を着実に遂行し、条例制定への県民の運動がもたらした効果を持続させ、さらに大きく育てていくことが必要だと考えています。