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微笑みの国③ー医療ツーリズム&30バーツ医療 (vol.264 )

2013/04/06 ブログ by 安川有里


3/28の最後の視察先は、BNH病院でした。

もともとバンコク・ナーシング・ホームとして知られてきたBNH病院は、
創立115年を超えるバンコクで最も古い病院です。
当時のタイ在住の英国人領事たちが発起人となり設立されました。
外国人が安心して利用できる病院をという要請から設立されたこの病院は、
ラーマ5世(在位1868~1910)の時代に、正式な認可を受けた医療施設・BNH病院。

1991年、BNHメディカルセンターが設立され、国際水準の病院としてタイ国内および外国人マーケットの要望に応えられる私立病院となりました。
1995年にはその装いと設備を一新し、バンコクでも有数の近代的な総合病院として高度な医療サービスを提供。
ケネディ一家も利用したといわれ、内外から高い評価を受けています。


(2階から見た受付の様子)

200人以上の高度な経験を持つ医師や専門家を擁して、全ての医療分野においてプロフェッショナルなケアを提供しています。
毎日800人の外来患者を治療する能力を持ち、
入院病床数は80床、集中治療室12床、新生児室20床……
平均稼働率が8割、年末から最近は満床状態だそうです。


(小児病棟)


(子どもの入院病床)


(転げ落ちないように、小さなお子さんはこんなベットで)


(入院棟から、庭に出る事ができます)


(こちらは、プレジデントタイプの病室)


(プレジデントタイプの病室は1日お食事代なども含め、222000バーツ!!!)

24時間365日、患者に対応。
不妊治療で有名な医師が産婦人科にいることや、
ヘルニアや腰痛、あらゆる脊髄系疾患に対応するスパインセンターなどが評判になっています。


(婦人科)


(肩などの治療はこちら。長年患っていた腰痛がすっかりよくなる敏腕医師もいらっしゃるそうです)


(こちらでは、体質を調べ、自分にぴったりのサプリを処方してくれます。未病改善!)

ビジネス街の近く、という立地から、欧米人や日本人駐在員も多く利用しており、
言葉に不安のある患者のために、10カ国語(英語・独語・仏語・スウェーデン語……もちろん日本語も)の通訳が常駐しています。
患者のサポート体制の充実を図るとともに、いわゆる医療ツーリズムを通じ、外国人患者の受け入れを担っています。

私たちを案内してくださったのは、小野寺久美子さん。
神奈川県出身の方で、いつもは病院の広報を担当されているそうです。

神奈川県の医療ツーリズムはこれからです。
どんなかながわデザインになるのか?
医療の質的向上や国際医療人材の育成・確保がポイントになりそうです。

もちろん、タイの病院すべてがこんなに豪華である訳ではありません。
案内して下さった小野寺さんによると、
前日に訪れたスラムに住む人たちや、所得の低い家庭では、「30バーツ医療」といって、
日本円で約100円で、病気を診てもらえる制度があるそうです。

帰国して、詳しく調べてみました。
30バーツ制度は、保健省の主導により創設された国民皆医療サービで、
1回の外来、または1回の入院につき「定額30バーツ」で医療サービスを利用することがで
きる制度です。2002年、タクシン政権下で採用されました。
それまでのタイの医療保障制度の最も大きな課題は、無保険者をいかに減 少させるかという点でした。
30バーツ制度は、初めて全国民に対して医療サービスを利用 する権利を公的に与えました。
従来の医療保障制度の枠組みから取り残されていた国民の誰もが30バーツ支払うこと
により医療サービスを受けることができるようになりました。
このように、大変民主的な意図から導入された30バーツ制度ですが、
調べてみるとその運用におい ては、深刻な問題が起こっているようです。
タイ政府の予算制約により、制度における加入者1人あたりの予算設定が、
他の制度に比べて著しく低く設定されているため、医療提供者による、高リスク患者の回避(すなわち、患者に対する逆選択問題)など
をもたらさないかという懸念。
すでに30バーツ制度との契約を結ばない民間の診療所 や病院が出て来ていて、
契約医療機関は、公立の病院にほとんど限定されていると言われています。

30バーツ医療制度と、今回報告しているような富裕層が通う病院・・・
前日に訪れたクロントイ地区の生活と、世界最高級の医療とホスピタリティ。
バンコクの光と影、その陰影はきわめて深いと改めて実感しました。


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