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卒業率99%の通信制高校ー熊本県視察③ (vol.204)

2012/09/03 ブログ by 安川有里


通信制の高校ながら、99%の生徒が卒業している学校がある。

若い人たちにとって、いつの時代も必要なのは「達成感」。
だから、私は文教常任委員会の委員になって以来、定時制高校と通信制高校に通う生徒たちが「卒業証書」を手にすることにこだわって来ました。
一般質問でも、これに関する質問をしたかったのですが、常任委員会で……との申し出があり、また、私自身も、さらに調査をしてから改めて一般質問で県の意見を伺いたいと考えていました。

そんな中、今回の熊本視察で「99%以上の高い卒業率を維持している通信制高等学校」を調査する
ということで、楽しみにしていました。

学校があるのは、天草の御所浦島。
最も近い漁港から、海上タクシーで30分。
有明海の中にポツンとある熊本県内で唯一の離島の町にあります。


(海上タクシー)

(海は、台風の影響でかなり荒れていました)

学校の名前は、勇志国際高等学校。
平成16年小泉政権下で、「御所浦町教育特区」の認定を受けたことをきっかけに、
翌17年にこの町に、株式会社立の広域通信制高等学校として認可を受けて誕生しました。
平成22年、県知事から学校法人の認可を受け、教育特区による株式会社立の学校から、学校法人の私立通信制高等学校になりました。

小さな島の小学校の跡地を利用した本校。
経営母体は千葉県の学習塾です。

入学者の7割は不登校経験者か、校長先生曰く「ヤンチャな」生徒 。
2割が中学を出てすぐの生徒で、8割が転編入生。

通信高校を選ぶ生徒はほとんどが問題を抱えた子ども達です。
そんな子ども達一人一人に向き合って指導されている様子が伺えました。


(野田将晴校長先生と)

通信高校の単位取得のための3つの課題は、
・レポート(添削指導)
・スクーリング(面接指導)
・テスト(定期試験)
36ヶ月以上の高等学在籍期間と74単位以上の単位獲得は最低条件です。
上記3つの課題に、勇志国際高等学校ならではの工夫が施されています。

レポートについては…
学習の進め方について担当の先生から連絡があり、自宅学習に安心して取り組めるよう細かく丁寧に指導。
授業については、いつでも、何度でも、納得出来るまで見ることが出来るMST授業です。
MST(Multimedia Smart Teacher)は、すべてオリジナルでレポートコンテンツは、全教科およそ620本、受験対策は主要5教科およそ400本、公務員試験対策が490本、小中学校の復習教材として小学校の算数を中心に53本が生徒に提供されています。


(MSTのイメージ。学校のHPより)

指導要領が変わる度に作り変えなければならない、大変な作業です。
先生方の努力がひしひしと伝わって来ました。
(私自身、塾講師時代、生徒一人一人のドリルを作っていたので、先生方の気持ちがよくわかります。生徒のことを考えると、あれもこれもと、頑張っちゃうんですよね)

スクーリング。
生徒と先生が直接顔を合わせて受ける授業です。6月から翌3月まで、年間22回のスクーリングが行われます。
生徒は、どこか1回、都合のいい時期を選んで参加します。
4泊5日、御所浦島で行われます。宿泊は、島内の民宿。6畳の部屋に雑魚寝。もちろん、携帯は圏外のため、使えません。
非日常の環境で、初めて会った同級生と生活を共にするのです。
ここで、生徒達は、これまでの心のバリアを打ち破り、仲間を作り、成長して島を後にします。

スクーリングでは、日本の歴史教育にも力を入れます。
道徳の時間もあります。「利他心」の養成を目的としているそうです。

不登校だった生徒が、無事、卒業証書を手にする、そして、卒業後それぞれの目標に向かって旅立っていく……
卒業は99%、進路決定率60%。

今後、学校不適合の子ども達が増えていくと言われています。
しかし、学校不適合=社会不適合、の社会にしてはならないと思っています。

勇志国際高等学校は、確実に生徒が増えています。
生徒達の入学の動機は、口コミ。
この高校を出た生徒が、「勇志の先生は違う」「自分を認めてくれる」と。
先生たちは、生徒たちがどうしたら立ち直れるのか、いつも考えている、とおっしゃっていまし
た。
「認めて、励まして、長所を伸ばす」

通信制高校の進路決定は2割と言われている中で、6割の進路決定を可能にしている秘訣は?
地道に、電話とメールのしまくり、とのこと。
「コミュニケーションですよ。」と進路指導の先生が、笑顔で話してくださいました。
IT技術を活用する一方で、心のぶつかり合いで問題を抱えた子ども達と真っ正面から接している先生たち。
教員経験者は2人のみで、後は塾講師だったと聞き、
同じ経歴を持つ私には、シンパシーを感じた調査でした。

野田校長先生は、先生方の情熱が全てとおっしゃっていました。

今度は、スクーリング中に訪れて、生徒達と膝を割って話したいと思いました。


(桟橋で、いつまでも手を振って送って下さった校長先生と桜庭先生)


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